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蕎麦を茹でた午後

01/31/99  Reiko

私たちは今アメリカのシリコンバレーに住んでいる。しかし、食生活は日本にいたときのままだ。胃袋は早々変わらない。いや、むしろ今の方がより日本らしいものを求めてているのかもしれない。今回は現在の日本食材事情についてあるエピソードに触れつつ紹介する。

これだけ観光情報を提供しているRSUZUKI.COMの2人だが、いつも「お出かけ」しているわけではないのだ。家でのんびりしている週末も多い。ほとんど午後に近い時間に起き、かるくありあわせのものを食べ、ソファに横になりながらビデオを見たり、本を読んだり、そんな午後を過ごすことが最近は増えてきた。雨の日がが増えたからかもしれない。今、シリコンバレーは雨季である。

そんな中で、なぜか、私のパートナーは池波正太郎にはまっている。最近まではとくに「剣客商売」をよんでいた。昨年日本で藤田まこと主演でテレビドラマ化されたから、聞き知っている人も多いかと思う。そして、ある時、静かにその本を読んでいた彼が、「蕎麦作らない?」と言い出した。「えー、さっきお昼食べたばっかりじゃない。足りなかったの?」と、塩野七海のイタリア・ルネサンスなんぞにはまっていた私には、彼が今どういう心情なのか想像もつかなかったので、少し反抗の声をあげた。しかし、彼はその時、すっかり気分は江戸時代だったらしい。「蕎麦とさ、日本酒なんかいいよねえ。」ほとんど夢見心地という感じである。彼によると今読んでいる「剣客商売」にはおいしそうに蕎麦を食べるシーンがたくさん出てくるのだそうだ。困ったものである。

私は、少々あきれたこともなかったが、それでも、だんだんと自分の頭の中にいい絵が浮かんできた。しゃきっとした蕎麦といろとりどりの薬味、きれいな酒器。こうなると早い。台所にあるのは蕎麦の乾麺と、にんべんのつゆの素、大根、グリーンオニオン、チューブ入りのワサビ、冷蔵庫には両親の持ってきてくれた菊水の缶。パーフェクトである。中には驚いた人もいるかもしれないが、この辺は日本人も多く住んでいるので食材には不自由しないのだ。私はさっそく蕎麦を茹で始めた。

わずか15分足らずですべての準備がおわり、プラス15分で最後のお茶まで飲み終わってしまうような短い時間の出来事だったが、「日本」を演出するために、仕舞い込んであった和食器をひっぱりだしてきて、存分に雰囲気作りを楽しんだ。乾麺なんか使うのである。器などで、きれいに見せないとせっかく盛り上がった気分がだいなしになってしまう。準備が終わったとき、私の気分は最高に良くなっていた。食卓を飾るのは楽しい。即席のことなので、そばつゆは自分で作らず市販の素を使う。たっぷりの大根おろしとちょとのわさびを入れればそれでも、おいしくなる。乾麺だって、冷水できちんと冷やせばそこそこおいしい。要はちょっと一手間なのである。

のんびりした午後に蕎麦を二人で食べたのはとても楽しかった。気分もよかった。彼も相当御満悦だったようである。よかったねえ。お代わりまで要求されたのは計算外だったけど。舌は日本人で胃はアメリカ人になっちゃったのね。

再三言うが、ここはアメリカである。ヤオハンUSAが健在なおかげで日本の食材は一通りそろう。不自由はない、といっても過言ではないと思う。本当に便利だ。でも、値段はけっこうなものだし、たとえば打ち立ての蕎麦なんか手に入らない。ものすごくおいしい和食を頂くのは、実は相当に無理がある。でも、彼は、まだ夢を見ている。「剣客商売」の料理本「包丁ごよみ」を買ってきて、「うまそう。」とつぶやいている。まあ、ほんとうに、おいしそうだからしょうがないか。日本に帰ったら、たくさん、美味しいものを食べようね。

追記:この辺の日本食材事情

Safewayなどのアメリカ系のスーパーでも醤油、みりん、カレー粉、のり、酢、味噌などはオリエンタルフードコーナーにおいてある。豆腐はサラダコーナーに。日本特有の野菜は大根、オクラ、日本ナスなどが手に入る。大根はスカスカで筋があることが多い。グリーンオニオンは一般的な食材どこにでもおいてある。浅葱よりも少し太く、白い部分が多いが、長葱よりはずっと細い。スキヤキには役不足。ビーフなども時々スキヤキ用にカットされたものが売っているが、なんだかとても厚い。"thin cut"というのは嘘だろうという感じ。

チャイニーズマーケットになるともう少し日本の食材が充実する。かまぼこやちくわなどの練り製品やさしみなども少ないが置いてある。納豆もある。調味料やふりかけなども豊富。時々、なぜかトロっぽいところが安くおいてあったりする。色が悪いからだろうか?薄切り肉はここでも高い。日本で買うよりは安いのかな。

ヤオハン、にじや、今原、などの日本食材店があり、たいていなんでもそろう。ちょっと高くて種類が限定される。ゴンチャロフのメッセ神戸が食べたい、といっても無理な話である。これまでの中では一番食材の値段の高い店だが、野菜はひょっとすると日本より安い場合もある。

ちなみに、紀ノ国屋があるので、日本の本も買える。最新の雑誌や単行本も2週間〜1ヶ月遅れで購入可。値段はモノによるが3割り増しくらいかな。池波正太郎も一部ここで購入。

 


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